プレハブで飲食店開業はできる?コンテナハウスとの違いや注意点を解説

飲食店を開業する方法の一つに「プレハブ店舗」があります。プレハブは、工場で製造した部材を現場で組み立てる建築工法で、短い工期と安定した品質が特徴です。初期投資をおさえつつ、大きな開口部や2階建てなど、形状や構造のバリエーションも選べます。 

今回は、プレハブ店舗の特徴やで飲食店を開業するうえでの注意点や、メリット・デメリット、さらにコンテナハウスやユニットハウスとの違いについて解説します。 

【飲食店開業】プレハブ店舗とは

「プレハブ」は英語の「Pre-fabrication(プレハブリケーション=あらかじめ作る)」に由来します。ここでは、プレハブ店舗の特徴や、類似する建築方法との違いを解説します。 

プレハブ店舗の特徴

プレハブ工法とは、工場であらかじめ部材を製造し、現場で組み立てる建築方法です。プレハブ工法で建てられた店舗を「プレハブ店舗」と呼びます。 

小規模店舗であれば、法律上プレハブ工法での建築が可能です。デザインバリエーションも豊富で、飲食店を含む幅広い業態に対応できます。 

なお、プレハブ店舗で飲食店を開業するには、飲食店営業許可や食品衛生責任者の資格取得が必要です。 

プレハブ店舗とコンテナハウスの違い

プレハブ店舗と似た形態に「コンテナハウス」があります。 

  • プレハブ店舗:工場で部材を製造→現場で組み立て 
  • コンテナハウス:重量鉄骨(厚さ6mm以上)を用い、工場でドアやサッシなどの設備を取り付け→トラックで現場に搬入 

このため、コンテナハウスは設置が短期間で済み、人件費を抑えられます。 

プレハブ店舗とユニットハウスの違い

ユニットハウスはプレハブ工法の一種です。ただし、現場での組み立てを前提とする一般的なプレハブ店舗とは異なります。 

ユニットハウスは、工場で建物の80%を完成させてから現場に運ぶため、工期を短縮できます。 

また、電気設備をはじめとした機器類も工場で設置するので現場での負担が軽く、人件費も安く済むといった利点もあります。 

プレハブ店舗のメリット

プレハブ店舗は、工期の短さや費用面の優位性に加え、一定の品質が保たれる点も魅力です。ここではプレハブ店舗ならではのメリットを紹介します。 

工期が短い

プレハブ店舗は、工期がおおむね一般的に1週間と短いのが特徴です。 

工場で製造した部材を現場で組み立てるだけなので、施工日数が少なく、早く開業できます。「繁忙期に合わせて開業したい」「競合店に先駆けて出店したい」といった場合でも柔軟に対応できます。さらに、人件費も抑えられるため、建築にかかる全体的なコストも削減できます。 

コストが低い

プレハブは部材を規格化して大量生産するため、建築費用を抑えられます。坪単価は50万〜150万円程度が目安で、同規模の在来工法に比べると初期費用を抑えやすくなります。 

また、工場で精度の高い部材を製造するため、現場での加工や手戻りも少ないため、追加費用が発生しにくいのも利点です。予算の見通しが立てやすく、資金計画が組みやすくなります。均一な品質で施工後の不具合も少なく、長期的にはメンテナンスコストも軽減できます。 

均一品質で完成度が高い

プレハブ店舗は工場で規格化された部材を扱うため、施工のばらつきが少なく、誰が組み立てても仕上がりに差が出にくいのが強みです。完成度を予測しやすいため、開業スケジュールや内装計画を立てやすい点もメリットです。 

一方で、標準仕様に沿って建てられることが多く、自由なデザインは難しい場合があります。外装材や内装仕上げで工夫し、飲食店らしい雰囲気や独自性を演出する工夫が必要です。 

どんな土地でも建てやすい

プレハブは、立地条件が厳しい土地でも建てやすい利点があります。変形地や狭小地など、在来工法では施工が難しい場所でも、設計上は柔軟に対応できます。さらに、プレハブは工場で生産された部材を現場で組み立てる方式のため、騒音や粉塵の発生を抑えられ近隣環境への影響も少なくなります。 

ただし、施工時にはクレーンでのつり上げや大型トラックによる部材搬入が必要です。道路幅や搬入経路、クレーン設置のスペースが確保できない土地では施工が難しくなる場合があります。事前に現地条件を確認しておきましょう。 

プレハブ店舗のデメリット

メリットが多い一方で、プレハブには注意すべき点もあります。店舗運営に影響する可能性のあるデメリットを確認しておきましょう。 

デザイン・レイアウトの自由度が低い

プレハブ店舗は規格化された部材を組み立てて作るため、自由にデザインやレイアウトを変えられません。外観や内装にこだわりたい場合も、標準仕様の範囲では難しいのが実情です。 

オプションやカスタマイズが可能な場合もありますが、その場合は追加コストや工期延長が発生します。開業をスムーズに進めるには、初期段階で対応可能な範囲を施工会社に確認しておく必要があります。 

空間が限られる

プレハブには柱が必要なため、広い空間を確保しづらく、デッドスペースが生まれやすい構造です。飲食店の場合は動線を遮り、従業員や来客の動きが制限される場合があります。 

さらに、柱の位置によって机や椅子などの配置に制約が生じ、店舗運営の効率にも影響を与えかねません。空間を最大限活用するには、配置計画に工夫が必要です。 

耐久性に課題がある

プレハブは軽量鉄骨を使うため、メンテナンス次第で10年程度は使用可能です。ただし、在来工法やコンテナハウスと比べると耐久性は劣ります。 

施工品質や材質、使用環境、メンテナンス頻度によって使用可能年数は変わります。そのため、長く使い続けるためには、点検や補修を定期的に行いましょう。 

また、構造自体は耐震基準を満たしているものの、防音性や断熱性は十分とはいえません。快適に利用するには、空調設備や断熱材の追加工事で補強が必要です。 

【飲食店舗用】プレハブとコンテナハウスの違い

飲食店を短期間で負担を少なく開業する手段として、プレハブとコンテナハウスがあります。ここでは、プレハブとコンテナハウスの違いを解説します。 

施工期間を確認する

プレハブの施工期間は1週間以上、コンテナハウスの施工期間は最短1日〜2日です。プレハブも施工期間が短いほうですが、それ以上にコンテナハウスのほうが早く完成します。 

耐久性をチェックする

プレハブは定期的なメンテナンスすれば10年以上使えますが、耐久性はそこまで高くありません。飲食店舗のように日常的に使用する場合、10年以内に使用できなくなるおそれがあります。 

一方、コンテナハウスは定期的なメンテナンスすれば40年以上使用可能です。雨や積雪にも強く、地域を問わず設置できます。 

防音性・断熱性を見極める

プレハブは壁の厚みが薄く、防音性と断熱性は高くありません。コンテナハウスは重量鉄骨を使うため、防音性と断熱性に優れています。 

費用を比較検討する

プレハブは、工場で材料を大量生産しているため建築費用は安く、坪単価30万円程度が目安です。基礎工事・給排水工事・電気工事に加え、内装・外観工事の費用も必要です。 

一方、コンテナハウスは材料費と施工費を含めて坪単価30万~50万円が目安です。建築確認申請が必要で、依頼する建築会社によって料金は変動します。 

飲食店経営では、土地代や設備費用、数ヶ月以上の運転資金も考慮する必要があります。 

固定資産税を把握する

固定資産税は、土地や建物などの不動産を所有している人にかかる税金です。建築基準法において建築物に該当する場合、課税対象となります。 

建築物に該当するのは、以下の3つの条件をすべて満たす場合です。 

  • 屋根と壁がある 
  • 土地に定着している 
  • 使用目的に適した空間になっている 

プレハブもコンテナハウスも屋根があり、四方を壁で囲まれ地面に定着しているため固定資産税の対象となります。 

固定資産税については以下の記事でも詳しく解説しています。併せてご覧ください。 

デザイン性を考慮する

プレハブは工場で大量生産した材料を組み立てられる反面、デザインやレイアウトは自由にカスタマイズできません。一方、コンテナハウスは窓や扉の配置を柔軟に決められるためデザインやレイアウトの自由度が高く、個性的な店舗づくりが可能です。 

設置場所を選ぶ

プレハブは2tトラックが通れる場所であれば設置・施工が可能です。しかし、電線や障害物のある場所、狭い場所には設置できません。設置する際は、建築基準法に抵触する場合があるため、事前に役所へ相談が必要です。 

コンテナハウスは4tトラックが通れる経路と、設置可能な敷地形状が条件です。 

プレハブで飲食店を開業する際の注意点

飲食店を開業する際には、プレハブならではの手続きや確認事項があります。プレハブ店舗で開業する際の注意点を紹介します。 

管轄の保健所へ確認・相談する

まずは管轄の保健所に相談し、飲食店の開業が可能か、確認しましょう。厨房や水回りなどの開業許可の規定は、各都道府県の保健所によって異なるため、開業準備前に問い合わせが必要です。 

自治体によっては保健所ではなく消防署での確認が求められる場合もあります。 

業者との契約内容を確認をする

プレハブ店舗を作ると決めたら、形態(テイクアウト専門、イートイン併設など)を決めたうえで業者と契約します。 

業者がプレハブの材料を製造するのと行政への確認は同時進行で進めておきましょう厨房設備や水回りの配置を曖昧にしたまま契約すると都道府県の基準を満たせず、追加工事が発生する場合があります。 

建築確認申請を申請する

プレハブの仕様によっては防火地域・準防火地域に設置できない場合があります。自治体の都市計画図やサイトなどで事前に確認しましょう。 

さらに、プレハブ設置には建築確認申請が必要です。都市計画法・建築基準法・用途地域規定に基づき、建ぺい率・容積率・敷地や道路の3点が合致しているか確認・審査します。 

建築確認申請が必要かどうかは、施工業者や建築予定地の自治体へ確認しましょう。審査が完了するまで、2週間~1ヶ月程度かかります。 

固定資産税の条件を確認する

プレハブ店舗も、建築物として扱われる場合は固定資産税がかかります。条件は前章で述べたとおりですが、プレハブならではの例外もあります。 

例えば、壁の一面が開放されている場合や、移動できる状態で設置している場合は建築物には該当せず、課税対象外となるケースがあります。そのため、設置方法によって税負担が変わる点を理解し、事前に管轄の税務署へ確認しましょう。 

まとめ

プレハブで飲食店を開業すれば、費用を抑えつつ短い工期で営業を始められます。 

ただし、開業にあたっては事前に管轄の保健所や消防署へ確認し、建築確認申請や固定資産税の条件を事前に確認しておくのが大切です。 

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