コロナ禍で大打撃を受けた居酒屋業界ですが、これから居酒屋を新たに立ち上げるのは無謀とも言い切れません。
むしろ既存店では成し得なかった新しい生活様式に対応した店を開けるチャンスです。
大手チェーンが1,000店舗以上閉店したと言われているなかで生き残れば、逆境に強い経営体質に成りえるのではないでしょうか。大変な時期に生き残った店は、景気が回復すれば大きな成長が期待できます。
今回は「いつかは居酒屋を開きたい」方のために、居酒屋開業に必要なポイントをお伝えします。居酒屋の開業を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
居酒屋開業・経営とは
居酒屋は文字通り、おつまみを食べながらお酒を飲んでもらうのが趣旨の飲食店です。
通常の飲食店が「食べ物>飲み物」なのに対し、居酒屋は「食べ物<飲み物」が基本的なスタイルです。
コロナ禍以前から若年層の酒離れが進み、客単価の低下が加速していると言われています。そこでコロナ沈静後も、酒に頼らないビジネスモデルの転換等も検討されています。
居酒屋開業のメリット
酒が主体であるからこそのメリットが居酒屋経営にはあります。ここでは居酒屋を開業するメリットについて解説します。
未経験でも始めやすい
居酒屋であればそこまで料理にクオリティは求められないため、未経験の方が開業するケースも多くあります。料理主体の飲食店であれば、料理のクオリティーに比重があるので、調理技術習得のために修行や経験が必要です。
比較的自由に作れる
居酒屋には決まった型は無く、比較的自由な店やメニュー作りが行えます。料理中心の飲食店で考えてみると「カレー屋ならこんなスタイル」「ラーメン屋ならこんなスタイル」と、お客様がそれぞれにイメージするスタイルがあるのではないでしょうか。
客単価が高い
お酒を飲むとリラックスして語らい、滞在時間が長くなります。そのため、追加注文が続いて1人分の客単価が比較的高くなる傾向があります。
居酒屋開業のデメリット
居酒屋の売上は主にお酒によるものが大きく、近年進む「酒離れ」は、居酒屋にとってメリットが薄れる原因となりえます。
「お酒を飲んでくつろぐ」従来の居酒屋の役割からお酒が抜けると、売上の根幹を失い、経営が成り立たなくなるケースも出てきます。
ここでは、居酒屋のデメリットについてみていきましょう。
回転率が低いのに客単価が下降傾向
1組のお客様の滞在時間が長いとその分、次のお客さんが入ってこないので、回転率は悪くなります。
お客様があまりオーダーせずに長居してしまうと、その日の売上はそれだけ悪くなる事態に陥ります。
酔客の扱いが大変
酔客にはアルコールが入ると性格が変わる方も一定数いるかと思います。陽気になる場合はよいのですが、ほかのお客様やお店自体に迷惑をかける方もいるでしょう。
相手を怒らせないようにする接客方法や、時にはひるまない毅然とした態度が求められます。
飲酒や喫煙の取締りに慎重になるべき
2020年4月からは飲食店は屋内が原則禁煙となり、喫煙者は喫煙エリアでの喫煙を義務づけられ、20歳未満は喫煙エリアへの立入が禁止になりました。それに従い新たな設備とスペースが必要になりました。
またお客様が飲酒運転をした場合、酒を提供した飲食店側も「酒類提供罪」に問われます。
居酒屋に必要な資金・手続き
居酒屋開業には約1千万円必要だと言われており、下記などがその内訳の一例です。
・店舗物件を取得して改装する費用
・厨房設備の購入
・広告宣伝費
・軌道に乗るまでの運転資金と生活費
費用を抑えたい場合は、以前の店舗をそのまま活用する居抜き物件を選んだり、中古の設備を導入したりする方法もあります。
居酒屋を開業するには、基本的に「食品衛生責任者」の資格と「飲食店営業許可」の申請が必須です。さらに、店舗の規模や状況によっては、各自治体の消防局が認定する防火管理者の資格も必要です。これらの資格は簡単な講習のみで取得できますが、講習の日程が決まっており、事前の予約と費用が発生します。
居酒屋開業の手順
ここでは店舗型の居酒屋はどのように開業するのか、標準的な手順を紹介します。
コンセプトを決める
一口に居酒屋と言ってもさまざまな形の居酒屋があります。
オーナーの世界観に振り切ったコンセプトでも問題ありません。しかし、都会なら客層が厚いという理由で成り立っても、地方ではそれほど需要がない場合もあります。「こんな店を作りたい」と思う自分のイメージと周辺の需要とのバランスが重要です。
最近の傾向では、メインメニューを決める際に飲酒需要を見込めなくても成り立つメニューを選ぶお店が増えているように感じます。例えば地方では、中華料理店や洋食屋が居酒屋の役割を担っている地域もあります。
お酒の需要が無くても、あらかじめ決まったメニューやテイクアウトで成り立つシステムにしておけば、どんな状況にも対応できるでしょう。
また、他店との明確な差別化も重要です。地域の特産品を使った料理を提供する、若者向けのカジュアルな居酒屋を目指すなど、ターゲット層に響くコンセプトの設定が求められます。
コンセプトを決める際は、「7W2H」の観点を取り入れ、誰でもどんなお店かイメージできるわかりやすい言葉で表現しましょう。
- Who:誰が
- What:何を
- When:いつ
- Where:どこで
- Why:なぜ
- Whom:誰に
- Which:どれを
- How:どのように
- How much:いくらで
立地や競合の状況、想定される客層などを事前にしっかり調査したうえで、オープン1年前から半年前までに決定しましょう。
経営計画を決める
借り入れをする場合は経営計画書が必要です。なお、すべて自己資金で行う場合は不要です。
「毎年の売上も横ばいで生活していければいい」と思っていても、融資先は売上が毎年上昇し、雇用も促進する前提での経営計画書を求められる場合が多くあります。経済的に発展すると見込まれる計画書でなければ審査が通りにくいためです。
ただ、現実とかけ離れた計画も否定されるため、実現可能な計画を作成しましょう。経営計画書があれば、各自治体や、経済産業省の創業補助金や助成金を獲得できる場合もあります。一度チェックしておきましょう。
経営計画の作成は、一般的にオープン1年前から半年前までに行います。経営計画では、主に下記の点を具体的に考えていきましょう。
- お店のコンセプト
- 商圏の市場調査
- 開業にかかる費用
- 開業時の資金調達
- 開業後の売上見込みの算出
- 資金が不足しそうな時に削る箇所
経営計画の内容は、コンセプトとお店の立地を考慮して具体的に決めていきます。具体的には、市場分析、売上予測、マーケティング戦略、資金計画などを含めて計画を立てるのがポイントです。綿密に計画を練ることで、事業の実現可能性を高め、成功への道筋を明確にできます。
資金計画を考える
計画書を作成したら日本政策金融公庫・各都道府県の信用保証協会からの融資を検討しましょう。
オープン半年前から資金調達を始めるのが理想的です。必要な資金は店舗の規模や設備、内外装工事などによって異なります。自己資金、民間金融機関や公的機関からの融資、親族や友人からの借り入れなど、複数の方法を検討して資金を調達しましょう。
必要な資金がそろわない場合は、事業計画書を見直して削るべき部分を検討しなければいけません。居酒屋開業には約200〜1,200万円の資金が必要になると言われますが、できるだけ運転資金を多く残すようにしましょう。十分な運転資金があれば、困難な状況でも打開策を講じられます。
物件探しをする
物件探しも、オープン半年前から始めましょう。コンセプトを最大限に反映できる立地や物件の選択が重要です。
その際、商圏調査を行い、そのエリアの需要や競合店の状況把握も大切です。お店の立地が事業計画と合致しているか、十分に検討したうえで物件を決定してください。
理想とする優良物件をいち早く紹介してもらうためには、経営計画書作成前の早い段階から不動産業者に足を運び、良好な関係や人脈を築くのが効果的です。
ただし、経営計画作成前は、不動産会社との関係性を築き、エリアの賃料相場観などの情報収集に留めましょう。具体的な話を早い段階で深めすぎると、むやみやたらに物件を勧められる可能性があるため注意が必要です。
物件選びの目安として、目標とする月商の10倍程度が適正な家賃とされています。経営計画で設定した目標月商の1/10以内の物件を選ぶように心がけましょう。
内装・外装の工事に取り掛かる
オープン3ヶ月前を目安に、内装・外装の工事に着手しましょう。具体的には下記の作業が必要です。
- デザインプランの作成
- 施工業者の選定
- 工事の進行管理
ご自分が決めたコンセプトを確実に実現してくれる業者選びが重要です。複数の業者から見積もりを取り、比較検討しましょう。
また、工事の遅延や予算オーバーを防ぐためにも、工事中は定期的に現場を訪れ、業者との密なコミュニケーションを心がけてください。完成後の最終チェックも忘れずに行いましょう。
一般的に、着工から内装工事が完了するまでには1週間〜3ヶ月ほどかかります。日中の工事に制限があり、夜間にしか工事できない建物もあるため、事前に確認しましょう。
機器・什器・備品を購入する
内外装工事と並行して、機器や什器、備品の購入を進めましょう。オープンの2〜3ヶ月前から準備を始めるのが理想的です。予算に余裕がなければ、中古品やレンタルでも問題ありません。
購入する機器・備品は、ガスコンロやオーブン、冷蔵庫、フライヤーなど多岐にわたります。また、お客様が快適に過ごせるよう、客席のデザインやレイアウトを考え、座席とインテリアの選定も必要です。
購入先は複数の業者から見積もりを取り、比較検討して選びます。機器の設置作業は専門業者に依頼するのが一般的です。設置後は問題なく使用できるかを必ず確認してください。
資格を取得する
資格やその他申請等を余裕がある時期に取得しておきましょう。営業許可は店舗の図面を持って、施工前に保健所に確認してもらいます。
居酒屋運営には、主に下記のような資格が必要です。
資格 | 内容 |
食品衛生責任者 | ・食品衛生に関する知識を持つ責任者の配置が必須 ・所定の講習を受講し修了試験に合格すれば取得可能 |
防火管理者 | ・店舗での火災を防ぐために必要 ・講習を受けて火災防止に関する知識を身につけると取得可能 |
上記の資格と後述する飲食店営業許可を取得せずに居酒屋経営をすると、違法になるため必ず取得しましょう。
許認可を取得する
開業のためには、下記のようなさまざまな許認可が必要です。
許認可 | 内容 |
飲食店 | ・所轄の保健所から飲食店の工事が完成する数日前までに申請が必要 |
深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書 | ・深夜営業でアルコールを提供する場合に警察署への提出が必須 ・その場でアルコール飲料をお客様に飲ませるのみであれば、酒類販売免許は不要 |
労働基準監督署への届出 | ・スタッフを雇用する場合に必要 ・適切な労働条件の整備も必須 |
必要な許認可を取得し、適切な方法で居酒屋経営を行いましょう。
スタッフの採用・教育する
スタッフの採用と教育は、1ヶ月くらい前から始めるのが効果的です。求人が早すぎると、採用から勤務開始までの期間が長くなり、辞退されてしまう可能性があります。一方で、ギリギリすぎると教育が間に合わないかもしれません。
面接を通じて必要なスキルや経験を持った人材を見極め、採用しましょう。採用後は、接客マナー、調理方法、業務フローなどを丁寧に教えて、オープン初日からスタッフが自信を持って業務に取り組めるようにします。スタッフの成長支援として、定期的な研修の実施も大切です。
集客方法・マーケティング
小さな居酒屋においては、クーポン雑誌の広告などの集客は費用対効果が薄いと考えられます。なぜなら、クーポンでの集客は店の客ではなく、クーポンの客となってしまうからです。
日頃の接客やSNSなどを使った1対1の接客の方が今の時代は効果的である可能性が高いため、いかに費用をかけずに宣伝を行い集客力を伸ばすかを勉強しておきましょう。
居酒屋経営成功のための重要なポイント
飲食店成功の秘訣を説く本や成功法則はネットでたくさん出回っていますが、そんな方でも今は不況に苦しんでいるかもしれません。
これまでの成功法則に従うだけでは経営が成り立つとは限りません。
居酒屋経営に限らず、経験から考察し、その店舗ごとの成功法則を見いだせる方が居酒屋業界で成功し続けているのではないでしょうか。ここでは、居酒屋経営を成功させるためのポイントを解説します。
経営規模に合わせて実行・運営する
経営計画書の件と矛盾してしまいますが、金融機関や自治体などで求められる経営計画書の通りに経営を行うと、小規模事業の実態に伴わなくなる場合があります。
金融機関側から、経営規模が大きい企業と同じ物差しで見られる場合があり、それに従ってしまうと「予算ばかりがかかって、実際の収益がともなわない」状況に陥るケースがあるからです。
「家賃を節約するために店に住む」はできないにしても、身の丈にあったビジネスを継続する意識を持ちましょう。
時代に合わせて柔軟に対応する
これからも若者の酒離れの傾向は加速していくかもしれません。コロナ禍で飲食店が酒類提供無しのスタイルや、テイクアウトに対応したように、時代の変化に合わせて柔軟に対応する姿勢が必要です。
一般的に飲食店で1番コストがかかるのが、店舗にかかる費用です。最近では「ゴーストレストラン」と呼ばれる店舗なしで飲食店を行うスタイルが生まれています。それも一つのヒントになるかもしれません。
今回は実店舗の居酒屋の開店手順をお伝えしましたが、ほかの開業スタイルも検討するとよいでしょう。
自分のこだわりに固執しない
飲食店に対するルールが厳しくなり、自分のこだわりの料理や世界観のあるお店の継続が難しくなってきました。こだわりを強く打ち出すほど客層が絞られてきますが、そもそも客層の絶対数が少なければ集客数を伸ばせません。
ネットの活用で、こだわりを収益化する情報は数多く見つけられます。居酒屋開業に固執する必要はありません。それでも居酒屋をやりたいと意思を確認したら、料理やサービスをお客さんのニーズに合わせることを考えましょう。
まとめ
居酒屋開業を目指す方は、自分が本当は何がしたいのか?何をお客に提供したいのか?を常に自分に問い続けて、軸をはっきり持つ点が重要なポイントです。そのうえで、人件費や設備投資といった初期コストの抑制方法をあらかじめ検討しておく必要があります。
ここで解説した居酒屋開業の手順を理解し、長く経営できる店を目指しましょう。
もし、初期費用を抑えつつ飲食店を開業したい方は、モバイルコンテナもおすすめです。低リスクで購入、レンタルもできるのでこれまで飲食店や屋台の経営経験がない方でも安心して開業できます。
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