飲食店を開業するには、資格や許可が必要です。何もない状態では飲食店を開業することができません。
どんな許可や届け出が必要なのか調べておかなければ、開業準備を進めたのに基準をクリアできていなかった…という事態にもなりかねないのです。今回は、飲食店の開業に必要な資格や許可について紹介します。
目次
飲食店を開業する手順
飲食店開業には多くの準備や手続きが必要です。手順を事前に把握しておけば、法的リスクを回避してスムーズに開業できます。下記で、飲食店を開業する手順を5つのステップに分けて紹介します。
手順1|コンセプトの決定・事業企画書の作成
飲食店の方向性を決めるために、コンセプトをしっかり固めることが大切です。具体的には、飲食店の種類(例:カフェ、居酒屋、レストラン)やターゲット層(例:会社員、家族連れ、若年層)、出店したいエリア、お店の規模、内装デザイン、メニューの内容などを決定します。
コンセプト決めを効率的に進めるためには、5W2H(Who、What、When、Where、Why、How、How much)のフレームワークを活用するのが有効です。5W2Hを活用することで、「誰に提供するのか(Who)」「何を提供するのか(What)」「どこで営業するのか(Where)」などを具体化し、事業の核となるアイデアを整理できます。
次に、コンセプトをもとに事業計画書を作成しましょう。事業計画書は、融資や助成金・補助金の申請時に必須であり、金融機関や支援団体に対して事業の成功可能性を示す重要な資料になります。
手順2|物件の選定
物件の選定は、事業の成功を左右する重要なステップです。立地や物件の種類によって集客力や営業形態が大きく異なるため、ターゲット層や予算に応じて選びましょう。店舗用物件には主に下記の3種類があります。
路面店舗 | ・通りに面しており、直接入店できるタイプの店舗。 ・視認性が高く、通行人がふらっと立ち寄りやすいため、集客力が高い。 ・賃料は比較的高めに設定されることが多いため、予算をしっかり考慮する必要がある。 |
地下店舗 | ・地下にある店舗。 ・賃料が比較的安く抑えられる。 ・視認性が低く集客力が弱いため、事前に看板の設置や広告宣伝が欠かせない。 ・バーやクラブなど特定のターゲットを狙う場合に適している。 |
空中店舗 | ・ビルの2階以上にある店舗。 ・地下店舗と同様に賃料が比較的安く抑えられるが、看板や広告による集客力の強化が不可欠。 ・隠れ家的な雰囲気を好むターゲット向けのカフェやレストランなどに適している。 |
また、物件選定の際は、必ず「飲食店可」の物件であることを確認する必要があります。
手順3|資格の取得・各種申請
飲食店を開業するには、法的要件を満たすための資格取得と各種申請が必要です。飲食店の開業に必要な資格や申請手続きについて詳細は後述しますが、食品衛生責任者や防火管理者、飲食店営業許可などが必要です。資格の取得や申請手続きを怠ると営業停止や罰則の対象となるため、確実に準備を進めましょう。
手順4|施工・備品の準備
営業環境を整えるために、店舗のデザインや設備の設置、営業に必要な道具の準備を進めます。まず、施工については、外観や内装デザインを決定することから始まります。お店のコンセプトやターゲット層に合わせて外観・デザインを決めましょう。
電気・ガス・水道などの設備工事では、厨房機器を効率良く配置し、調理や接客の動線がスムーズになるように設計するのがポイントです。また、予算管理も重要であり、無駄な出費を避けつつ必要な部分にしっかり投資することが大切です。
施工と並行して、営業に必要な備品や消耗品の準備も進めましょう。食器やグラス、カトラリー、調理器具、清掃用具などをリストアップし、必要数を確保します。
手順5|開店前の最終調整
飲食店開業の最後のステップは、スタッフの採用・教育やオペレーションの確認、メニュー作成、宣伝活動などの最終調整をします。特にスタッフの採用と教育は重要です。研修が不十分なままオープンすると、接客の質が低下し、店舗全体の評価に悪影響を与えかねません。
オープンまでに、注文の取り方や料理・ドリンクの提供手順、レジ操作、クレーム対応など、業務内容を具体的に指導しましょう。
飲食店開業に必要な資格は2つ
まずは飲食店の開業に必要な資格を2つ解説します。
食品衛生責任者(必須)
飲食関係のお仕事をされた方なら聞いたことがあるかもしれない「食品衛生責任者」ですが、こちらは飲食店だけでなく食品の衛生管理が必要とされる場合に必要となります。
また、複数店舗を管理している場合は店舗ごとに選任が必要となり、交付された方が複数店舗の責任者になるということは許されていません。
主な役割として大阪市によると、
営業者は、飲食店等の許可を要する営業の施設ごとに専任の食品衛生責任者を設置する必要があります。食品衛生責任者は、営業者の指示に従い、施設における衛生管理にあたるなどの役割を担うことになります。
とのことでした。
食品衛生責任者になるには
各自治体で開かれている「食品衛生責任者養成講習会」を受講しなければなりません。計6時間の講習後に確認試験を行い、無事修了証書を受け取ります。
・食品衛生学(2.5時間)
・食品衛生法(3時間)
・公衆衛生学(0.5時間)
こちらに関しては都道府県などで詳細がまとめられていますので、受講する場所のホームページ等をご覧ください。
また、食品衛生責任者は店舗ごとに必要ですが、下記の資格を取得している場合は講習会を受講しなくても食品衛生責任者として任命できます。
・栄養士
・調理師
・製菓衛生師
・食鳥処理衛生管理者
・船舶料理士 など
防火管理者(店舗規模によって必要)
先ほどの資格が必須であったのに対し、こちらの「防火管理者」は店舗の規模によっては不必要となる場合があります。
その基準は、「収容人員が30人以上の店舗を営業する場合」です。
主な役割として大阪消防庁によると、
防火管理者とは、多数の者が利用する建物などの「火災等による被害」を防止するため、防火管理に係る消防計画を作成し、防火管理上必要な業務(防火管理業務)を計画的に行う責任者を言います
とのことでした。
防火管理者になるには
代表的な方法としては「防火管理講習」の課程を修了し、講習修了資格を得ることで任命可能となります。こちらは計3~4日かけて講習を受けることになるので、気軽な気持ちでは取得できなさそうですね。
・甲種新規講習(10時間)
・乙種講習(5時間)
・甲種再講習(2時間)
各店舗によって必要性は変わってきますのでこちらも詳細は都道府県ごとのホームページをご覧ください。
飲食店開業に必要な届出
ここからは資格取得後に必要な届出等に関して解説します。営業する形態によって提出が必要な届出が変わるため、漏れがないように自分でしっかりとすべて確認しておきましょう。
個人事業の開業・廃業等届出書
開業を行うということは、個人事業主になるということです。会社員だった方はこれから自分で確定申告をしなければなりません。その際必要な届出が「個人事業の開業・廃業等届出書」となります。
国税庁によると「事業の開始等の事実があった日から1月以内に提出してください」とありますので、開業後に忘れず提出するよう準備しておきましょう。
税務署に行く時間がないという方は、Webや郵送でも受け付けているそうなので、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
飲食店営業許可
こちらも飲食店を開業する際に必須となる申請となります。簡単にいえば、保健所に対して飲食店を開業すると届出を提出し、営業許可を得る必要があるという形です。
大阪府においては3ステップを踏むこととなり、一朝一夕で必要な物がそろうわけではないので事前準備は欠かせません。
(1)事前相談
(2)申請書の提出・書類審査
(3)立入検査
申請時には先ほど解説した「食品衛生責任者養成講習会の修了者」であることが要件ですので、必ず講習会には参加しておきましょう。
防火管理者選任届
こちらは先ほどの「防火管理者」を取得される店舗に関係がある届出になります。店舗の防火管理者はこの方を選任しましたという旨を所轄消防署長に届け出る。というイメージですね。資格取得時の「修了証」など、防火管理者の資格を証する書面を添付し、提出しましょう。
労災保険、雇用保険加入手続き
次に、飲食店だけでなく事業をする上で、アルバイトやパートなどの従業員を雇用する場合に必要となる場合があります。
まず、労災保険は一名でも雇った場合加入が必要になります。労働基準監督署にて手続きを行うのですが、労働者が業務上や通勤中にケガをした場合に保険給付を行います。
雇用保険は従業員の労働状況にもよりますが、事業主は労働保険料の納付や各種届出が義務付けられています。手続き先は公共職業安定所です。
飲食店の開業に必要な資金
飲食店を開業するために必要な資金は平均で約1,000万円とされていますが、実際には店舗のジャンルや規模、内外装工事の内容によって大きく異なります。例えば、高級レストランや大型店舗では設備投資や内装費用がかさむため、必要資金がさらに増加する一方、小規模なカフェやテイクアウト専門店では比較的低予算で開業可能です。
開業資金には物件取得費や内外装工事費、厨房機器・備品の購入費、人件費、広告宣伝費、運転資金などがあげられます。ただし、これらの費用をすべて自己資金でまかなう必要はなく、金融機関による融資を活用するのが一般的です。
コストを抑えて飲食店を開業するなら
コロナ禍をきっかけに、店舗を持たずに開業する手法が増えています。キッチンカーや屋台など店舗を持たない営業形態なら、店舗を維持する固定費が実店舗ほどかからないので、日々の支払いを抑えることが可能です。
しかも、店舗がひとつの場所に固定されていないため、移動しながら集客しやすい場所に出店できます。時間帯や曜日によって人が集まる場所は変わるので、実店舗よりも幅広い客層を取り込むことができ、収益を確保しやすくなります。
店舗を持たない飲食店をもつメリットについては、下記の記事で詳しく紹介しています。
店舗を持たずに開業するなら、「HIRAKELレンタル」がおすすめです。「HIRAKELレンタル」なら低予算でモバイルコンテナやワゴン型屋台をレンタルできます。
はじめて飲食店を営業する方でも、安心して自分のお店を持つことができます。ぜひ「HIRAKELレンタル」を活用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
飲食店を開業するためにはさまざまな許可や届け出が必要です。開業時はなにかと準備がかかるため、計画的に各種申請の手続きを進めておくようにしましょう。
また、開業するにあたって、特に必須となる資格はありません。しかし、資格があればお店のアピールポイントになり、お客様からの信頼を集めることができます。自分のお店で扱うものに関する資格を取っておいて損はないはずです。