商店街の活性化は、全国各地で「思わず足を運びたくなる仕組み」を備えたプロジェクトが行われています。プロジェクトを成功させるには、商店街がもつ役割や独自の強みを把握し、最大限に活かすことが重要です。
今回は、実際に商店街の活性化に成功した商店街の事例と、失敗しないためのポイントを紹介します。
目次
商店街の活性化が求められる背景
商店街は、日常の買い物場所であるだけでなく、地域住民の交流拠点、防犯・防災の見守り機能、文化継承、高齢者や子育て世帯の支援といった、地域社会の基盤としての役割を担っているといわれています。一方、近年では少子高齢化による経営者不足や空き店舗の増加、大型ショッピングモールの普及による来街者の減少などにより、商店街が衰退しつつあります。
この状況が続けば、商店街本来の役割を果たせなくなり、住民の暮らしに悪影響を与えかねません。これらの課題を解決し、商店街の役割を持続させるために、各地でさまざまな取り組みが展開されています。
商店街活性化の成功事例をピックアップ
商店街の活性化に必要なのは、行きたくなる理由や必然性です。この章では、商店街の活性化に成功した事例を紹介します。
地域住民の生活を支える「下町人情キラキラ橘商店街」
東京都墨田区にある下町人情キラキラ橘商店街は、店主の高齢化による店舗数の減少や、現代のライフスタイルにそぐわない店舗経営が課題でした。そこで、女性の社会進出や高齢化が進む地域のニーズを把握し、24時間営業のディスカウントストアやカフェ併設型居宅介護支援事業所を誘致します。
さらに、オーナーから空き店舗を借り上げ、希望者へ貸し出すサブリース事業を開始しました。出店場所と出店時の経営サポートを行い、新たに洋服店やベーカリー、カフェの開業へつなげました。
これらの取り組みにより、一時期は62店舗にまで減っていた店舗数が2024年時点で76店舗まで増加しています。
トレーラーハウスを活用したにぎわい創出事業「deve★so」
北海道札幌市にある狸小路商店街では、アーケードの有効活用と再開発工事にともなう来街者数の減少が課題でした。商店街のにぎわいを取り戻すため、道路協力団体制度を利用し、物販やオープンカフェなどの路上販売ができるように環境を整備しました。
この仕組みを活かし、トレーラーハウスやキッチンカーによる出店イベント「deve★so」を開催します。仮設型の店舗形式とすることで出店の敷居を下げ、新規出店を後押ししました。また、流行や季節に合わせた多様な商品を提供することで、商店街の新たな魅力向上につなげました。
これらの取り組みにより、来街者数がピーク時の8割程度まで回復し、にぎやかな街づくりにつながっています。
おしゃれな店舗用コンテナハウスについて知りたい方は、下記を併せてご覧ください。
地域の大学との共同プロジェクト「学生用シェアハウス」
群馬県前橋市の前橋中央通り商店街では、来街者数の減少による日常的なにぎわい不足が課題でした。イベントは一時的な集客効果はあるものの、普段から人が集まる環境づくりには直結しにくいため、長期的な視点での取り組みが必要とされました。
そこで、街なかに常に人がいる仕組みが必要であると考え、前橋工科大学と協働し空き店舗を活用した「学生シェアハウス」を整備します。
前橋市が実施する家賃補助制度を活用し、月10時間以上の「地域活動への参加」を条件として学生を誘致します。学生が地域住民と交流を深め、友人を自宅に招く機会やSNS発信を通じて、商店街に新たな来訪者を呼び込みました。
この取り組みが評価され、近隣の商店街でも同様の学生シェアハウスが建設され、中心市街地全体の活性化につながっています。
商店街の認知度向上を目指した「まいんコロッケ」
茨城県龍ケ崎市の龍ケ崎本町商店街は、来街者数の減少による廃業店の増加が課題でした。そこで商店街の認知度向上を図るため、ご当地グルメの「まいんコロッケ」を活用し、「コロッケの街・龍ケ崎」として全国へ発信します。
県内外のイベント参加や、地元食材を用いたコロッケの開発にも取り組みました。2016年に開催した「第4回全国コロッケフェスティバルin龍ケ崎」では、約6万8千人来場し大きな成果を上げました。
さらに、まいんコロッケをはじめとする龍ケ崎市内の飲食店で提供されるコロッケを「龍ケ崎コロッケ」としてブランド化し、地域活性化に貢献しています。
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官民一体で取り組む「気仙沼クルーカード」
宮城県気仙沼市は、東日本大震災後に商業と観光の復興を図るため、「気仙沼クルーカード」の運用を始めました。
加盟店でポイント付与を行うだけでなく、カード利用者の属性や嗜好データを蓄積・分析し、顧客ニーズに基づく商品開発やサービス改善に活用しました。さらに、売り上げの変動をリアルタイムで把握できるため、閑散期でも効果的なプロモーション施策を実施しています。
その結果、2021年時点で会員数は約4万人、年間利用額5億円を突破し、2023年には会員数が5万人を超え、地域経済の復興と活性化に寄与しています。
商店街活性化を成功させる3つのポイント
商店街を活性化するためには、現状を正しく把握し、地域のニーズに応えながら独自の魅力を伸ばす必要があります。この章では、商店街活性化を成功に導く3つのポイントを紹介します。
現状分析による課題の把握
まずは、商店街が置かれている状況を理解し、課題を洗い出していきます。その際、下記の項目を押さえて分析すると効果的です。
- 商店街における課題の整理（来街者の減少、空き店舗の増加など）
- 競合商業施設・人の流れ（営業時間、駐車台数、主力商品、バス路線など）
- 地域の人口・通行量（年代、性別ごとの特徴など）
商店街の店主や地域住民へのヒアリング、現地調査を通じて具体的に課題を把握できれば、的確な施策を立案できます。また、地域の人口や通行量は、自治体の統計データを活用するとよいでしょう。
地域住民のニーズを反映
商店街には、生活者の利便性向上や子育て・高齢者支援など地域課題を解決する役割も期待されています。そのため、地域住民のニーズを取り入れた取り組みは重要です。
店舗のレイアウトの改善や接客の工夫により、住民に寄り添ったサービスを提供することで、大型商業施設にはない魅力を生み出せます。例えば、高齢者への買い物支援や保育園の誘致などがあげられます。
また、キャッシュレス決済を取り入れ、若者や観光客が買い物しやすい環境を整えるのも有効です。
商店街の強みをブランド化
商店街の活性化には、地域の特色を活かした取り組みが欠かせません。例えば、地域文化や商店街独自の専門性、人とのふれあい、きめ細かなサービスなどが強みです。
このような特色を「コロッケの聖地」「高齢者支援」「職人の街」などのコンセプトとしてブランド化することで、商店街全体で取り組むプロジェクトに発展します。
統一したブランド商店街全体で掲げすれば、メディアに取り上げられやすくなり、情報の発信力の強化にもつながります。
まとめ
商店街を活性化させるには、日常的に人が集まる仕組みづくりが欠かせません。そのためには、商店街の課題や強みを的確に把握し、地域住民のニーズを取り入れたプロジェクト展開が必要になります。
また商店街を活性化させるプロジェクトとして、マルシェやイベントの開催は効果的です。このようなイベントには、HIRAKELの「モバイルコンテナ」の導入が適しています。
モバイルコンテナは設営や撤去の負担が少なく、移動ができることで基本的に建築確認申請が不要なため、自治体や商店街にとって実用性の高い選択肢といえます。
