店舗を開業する際、成功のカギを握るのが適切な値入率(ねいれりつ)の設定です。値入率とは、商品の販売価格に占める利益の割合を示す重要な指標で、事業の収益性を左右します。今回は、これから開業を検討している方に向けて、値入率の計算方法から高める方法について、わかりやすく解説します。
目次
値入率とは?
値入率(ねいれりつ)を理解するためには、まず「値入」という概念から説明する必要があります。
「値入」とは、商品の販売価格(売価)を決めることを指します。つまり、仕入れた商品にどれくらいの利益を上乗せして販売するかを決定する作業のことです。
「値入率」とは、販売価格と仕入原価の差額に対しての利益の割合(%)のことを表します。簡単に言えば、商品の販売価格のうち、どれくらいの割合が利益になるのかを示す指標です。
値入率が高ければ高いほど、その商品から得られる利益が大きくなります。例えば、値入率が30%の商品と70%の商品があった場合、同じ売上金額でも70%の商品の方がより多くの利益を生み出すことができます。
値入率の計算方法
値入率の計算は、以下の公式を使って簡単に求めることができます。
値入率(%)=(販売価格-仕入原価)÷販売価格×100
この公式を使って、具体例で計算してみましょう。
【例】 売価1,000円、原価700円の商品の場合 (1,000-700)÷1,000×100=30% →値入率は30%となります。 |
この計算結果から、1,000円の商品のうち30%にあたる300円が利益、70%にあたる700円が原価ということがわかります。
値入率の計算を行う際は、販売価格と仕入原価を正確に把握することが重要です。販売価格には、商品の本体価格だけでなく、消費税や送料なども含めて計算する場合があります。また、仕入原価についても、商品の購入価格に加えて、輸送費や保管費用なども含めて考える必要があります。
値入率とあわせて覚えておきたい用語
値入率を理解する上で、似たような用語がいくつか存在します。これらの用語は混同しやすいため、それぞれの意味や計算方法の違いを明確に理解しておくことが重要です。
似た用語1|値入高と値入率の違い
値入高は、売価と原価の差額そのものを指します。つまり、商品1個あたりの利益額のことです。計算式は、以下の通りです。
値入高=売価-原価
先ほどの例で計算してみると、以下のように表せます。
【例】 売価1,000円、原価700円の場合 1,000-700=300 →値入高は300円となります。 |
値入率は売価に占める利益の割合(%)を示すのに対し、値入高は利益の絶対額(円)を示します。値入率が30%、値入高が300円という具合に、同じ商品でも異なる視点から利益を表現していることがわかります。
経営においては、値入高で商品1個あたりの利益額を把握し、値入率で収益性の高さを判断するという使い分けが重要です。
似た用語2|原価率と値入率の違い
原価率とは、売上高を100%とした場合の売上にかかったコストの割合を示します。原価率は、以下のように求めることが可能です。
原価率=原価÷売上高×100
【例】 売上高50,000円、原価25,000円の場合 25,000÷50,000×100=50 →原価率は50%となります。 |
値入率と原価率は、足し合わせると100%になります。原価率が50%なら値入率は50%、原価率が30%なら値入率は70%となります。
経営者にとって原価率は、どれくらいのコストをかけて商品を作っているかを把握する指標として重要です。一方、値入率は、どれくらいの利益を得られているかを把握する指標として活用されます。
似た用語3|粗利益率と値入率の違い
粗利益率とは、売上高に占める粗利益高の割合のことを指します。粗利益率の計算式は、値入率の計算式と同じです。
粗利益率=粗利益高(売上高-売上原価)÷売上高×100
【例】 売上高が50,000円、売上原価が25,000円の場合 (50,000-25,000)÷50,000×100=50 →粗利益率は50%となります。 |
値入率と粗利益率の違いは、計算するタイミングにあります。値入率は売価を設定した段階での売価に占める利益の割合のことを指します。一方、粗利益率は期末などに棚卸作業を行い、ロス後に在庫が確定した状態での数値です。
実際の店舗経営では、値下げや廃棄、管理ミスや万引きなどのロスが発生するため、当初設定した値入率よりも実際の粗利益率の方が低くなることが一般的です。
値入率の目安
値入率の適正な水準は業種によって大きく異なります。業界ごとの目安を理解しておくことで、自分の事業における適切な値入率を設定することができます。
飲食店の場合
飲食業では一般的に原価率30%程度が適正といわれており、値入率の目安は70%になります。ただし、業態によって値入率は変動します。
具体的な業態別の値入率の目安は以下の通りです。
寿司店:55%~60%
高級レストラン:60%~65%
焼肉店、居酒屋、カフェ:65%~70%
ラーメン店:70%
洋菓子店:70%~75%
寿司店の値入率が比較的低いのは、新鮮な魚介類などの高価な食材を使用するためです。一方、ラーメン店や洋菓子店の値入率の高さは、比較的安価な材料で付加価値の高い商品を作ることに起因しています。
飲食店を開業する際は、これらの目安を参考にしながら、自店の業態や立地、ターゲット客層に応じて適切な値入率を設定することが重要です。
雑貨店の場合
雑貨店の場合、平均的な仕入れの掛け率は60%程度とされています。掛け率とは仕入価格が売価に占める割合のことで、値入率に換算すると40%程度になります。
ただし、ハンドメイド作品の販売なら原価率は30~40%が目安とされており、値入率は60~70%程度となります。ハンドメイド作品の場合、材料費以外に制作時間や技術料も価格に含まれるため、一般的な雑貨よりも高い値入率を設定することができます。
雑貨店の値入率は、お店のコンセプトや取り扱う商品、販売方法によって大きく変動します。高級雑貨を扱う店舗では値入率を高く設定できる一方、大量販売を行う店舗では値入率を抑えて価格競争力を高める戦略もあります。
値入率を高める方法
事業の収益性を向上させるためには、値入率を高めることが重要です。値入率を上げる方法は大きく分けて、原価を下げる方法と売価を上げる方法の2つがあります。
方法1|原価を下げる
原価を下げる方法として、以下の2つがあげられます。
仕入れ先に原価の値下げ交渉をする
原価を下げる最も直接的な方法は、仕入れ先に対して価格の値下げ交渉を行うことです。ただし、交渉は過去の実績があってこそ成り立ちます。
継続的に一定量の商品を購入している実績や、今後の購入予定量を示すことで、仕入れ先も値下げに応じやすくなります。
交渉を成功させるためには、販売数を上げることが値入率アップのための近道となります。
仕入れ先を見直す
既存の仕入れ先だけでなく、新しい仕入れ先を開拓することで原価を下げることができます。同じ商品でも、仕入れ先によって価格が異なることは珍しくありません。
仕入れ先の見直しは定期的に行うことが重要です。複数の仕入れ先から見積もりを取り、比較検討することで、より良い条件の仕入れ先を見つけることができます。
方法2|売価を上げる
売価を上げる方法は、二通りあります。
値上げをする
商品自体の販売価格を上げることで、値入率を向上させることができます。ただし、値上げをすると顧客が離れるリスクがあるため、慎重に検討する必要があります。
値上げを成功させるためには、商品やサービスの付加価値を高めることが重要です。
値入率が高い商品を開発・販売促進する
既存商品の中で値入率が高い商品を積極的に販売促進したり、新たに値入率の高い商品を開発・仕入れたりすることで、全体の値入率を向上させることができます。
商品ごとの値入率を分析し、収益性の高い商品を特定することが重要です。
まとめ
値入率は店舗経営において極めて重要な指標です。適切な値入率を設定し、継続的に改善していくことで、事業の収益性を高めましょう。
自分の事業に最適な値入率を見つけることが成功への第一歩です。また、原価の削減や売価の最適化を通じて、値入率の向上を図ることも重要です。
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